|
||||||||
粒子と反粒子の数が釣り合っている状態からどうやってバリオン数が生じたのでしょう?
その理由を次に説明します。 |
||||||||
これまで幾つか素粒子の反応を見てきましたが、何れもバリオン数(=バリオンの数−反バリオンの数)を変えませんでした。例えば中性子が陽子に崩壊する過程 でも反応前のバリオン数は1(中性子)、反応後も1(陽子が1で電子とニュートリノは0)でバリオン数は変わっていません。また初期宇宙で頻繁に起こっているクォークと反クォークの対消滅、対生成の反応 ではクォークがバリオン数+1/3、反クォークが-1/3を持っていてペアではバリオン数は0です。光子はバリオン数0ですから、この反応の前後でバリオン数は変化していません。 |
||||||||
第3章で素粒子の世界はゲージ場の量子論で記述されていると述べました。そしてこの理論では粒子に対して必ず反粒子を含んでいます。もしその理論が粒子と反粒子の入れ替えについて対称的ならば、粒子で起こるある反応について、そっくりそのまま反粒子に入れ替えた反応も同じ確率で起こることを意味しています。例えば、上記の中性子の崩壊に対して、反中性子が反陽子と陽電子とニュートリノに壊れる反応が同じ確率で起こることになります。また、対消滅過程では、クォーク・反クォークペアで粒子反粒子の入れ替えをしても元に戻り、光子の反粒子は自分自身なので、対消滅(対生成も)過程は粒子反粒子を入れ替えても自分自身に戻ってしまいます。 場の量子論では、この「入れ替え」のことをC変換(荷電共役変換)と言います。そして空間座標を反転するP変換(パリティ変換)とC変換を同時に行うCP変換も粒子と反粒子を入れ替えますので、厳密に言えばC変換とCP変換の下での対称性を破っていなければなりません。 1.の条件を満たしていても、2.の条件が満たされていなければバリオン数を作ることは出来ません。 この左側の反応ではバリオン数が0から+2/3に、右側の反応では0から-2/3に変化しています。初期宇宙の高温の時期にXとその反粒子は光子から対生成されたとすると、それらが崩壊するときに次のような反応が起こります。 ここでXとその反粒子の数は同じだけ作られますので、もしXがクォークに崩壊する確率と、反Xが反クォークに崩壊する確率が全く同じなら、残されるバリオン数はクォーク対から+2/3、反クォーク対から-2/3で、合計0となります。 |
||||||||
1.と2.の条件が満たされていても、高温で温度が一定の一様な状態(平衡状態)が実現されていたとすると、バリオン数を作ることは出来ません。 |
||||||||
|