宇宙の物質の起源

 

 

 

現在の宇宙の姿


星空と宇宙

ひとは古代から夜空を見上げて世界観、宇宙観を獲得し拡大してきました。
毎年、同じ季節に同じような星空が見えることから星座の概念が生まれ、季節との関係をつけていました。
肉眼で見ることのできる星は、今のように街が明るくなかった昔は多かったはずですが、それでも人間の目が感じることのできる光は限られていますので、見えない星は無数にあります。
ガリレオによる望遠鏡の発明以降、より多くの星が見えるようになって星空の観測が進展し、ケプラーによって惑星の運動の規則性が発見され、その成果はニュートンによる力学の確立に大きな役割を果たしました。
今では、星には、惑星とその衛星、惑星のように太陽の周りを公転する彗星、自らが光を放つ恒星があり、またそれらが集まってできた星団や星雲があることが知られています。


夜空に見られる「星」といっても、上記のようにあ惑星もあれば恒星もあり、一見星に見えていても望遠鏡で見ると星団や星雲だったりします。


これは木星(左)と土星(右)です。左の写真には小さいのですが木星の衛星も写っています。

次に冬の星空を見てみましょう。
薄い天の川を囲むように明るい6つの星とベテルギウスというオレンジ色の星が成す「冬のダイヤモンド」が見られます。これはデジカメで1分程度シャッターを開けて撮った写真で、肉眼では見え無い星がたくさん写っています。


ベテルギウスはオリオン座の明るい四隅の1つです。最も明るいシリウスとベテルギウス、プロキオンは冬の大三角と呼ばれています。オリオン座には、この4つの星に囲まれて並んだ三ツ星があり、冬の星座の中ではもっとも見つけやすい星座です。
この三ツ星の辺りを拡大したのが次の写真です。

三ツ星の最も左にある星(アルニタク)の周りにも何か星雲が見えています。その下の方にある赤色の星雲が「オリオン大星雲」(M42)と言われるものです。

星空にはこのような「散光星雲」と呼ばれる天体が数多くあります。この赤い光は星の活動のエネルギーである水素と関係しています。(後述するように水素は宇宙の中の物質の75%を占めています。)
望遠鏡とデジカメを使って写せるこれらの星雲は、私たちの太陽系が属する「天の川銀河」の中にあります。
肉眼で見える星も近くの星なので、この銀河のメンバーです。
星空は2次元的に見えるので、一見同じ明るさに見えても、遠くの明るい星なのか、近くの暗い星なのかわかりません。宇宙科学の進展には、星までの距離の特定が非常に重要な鍵となりました。
例えば、オリオン大星雲まで約1300光年の距離があります。

「冬の大三角」もあれば、「夏の大三角」もあります。
ベガとアルタイルまでは、それぞれ約25光年と16光年の距離がありますが、デネブは約1400光年離れています。これだけ距離が違っても、見ているだけではわかりませんね。

天の川銀河の外には、天の川銀河とそっくりな銀河が見られます。
最も近いところでは、有名なアンドロメダ銀河で、約230万光年離れています。この銀河の中に、私たちが地上から見るような無数の星、星雲などが含まれています。

このような銀河は多数見つかっていて、遠ければ星のように小さく見えます。

巨大な望遠鏡を用いて約130億光年の距離がある天体も見つかっています。
遠くの星を見ることは、過去から来る光を見ることになります。

こうしてみてきたように、宇宙には様々な天体があります。これらの星や銀河がどのようにしてできてきたのかは天文学や天体物理学の主題です。それ自体は非常に興味深いテーマなのですが、本講座では宇宙そのものの成り立ちや、宇宙の中のエネルギー(物質もそれに含まれます)の起源にスポットを当てて解説いたします。
このようなテーマを考える学問は「宇宙論」と呼ばれていて、「天文学」や「天体物理」とは区別されています。
もちろん、その発展には宇宙の観測が欠かせません。特に近年の科学技術の発展に基づく観測技術の進展は目覚ましく、宇宙論にも新しい知見と課題を提供し続けています。
また、本講座で紹介するミクロな世界の物理学とも関係しいます。そのことが少しでもお伝えできれば幸いです。