宇宙の物質の起源

 

 

 

宇宙の終わり
「宇宙の終わり」なんて考えたくありませんが、これまでの観測結果や理論からどのような予想ができるか考えてみましょう。

「宇宙の年齢」のところでお話ししましたが、現在の宇宙は加速膨張しているようです。これから未来にはこの膨張はどうなるのでしょうか?

宇宙の膨張の仕方は宇宙のエネルギー密度(量とその内容)によっています。現在の値とその中味についてはここで紹介しました。真空エネルギーが約7割を占めているのですが、このエネルギーの正体が実はよく分かっていません。従って、真空のエネルギー密度は一定のままなのか、それとも変化するのか、あるいは、他の形態へと変化するのか、は予測できませんが、いずれかによって将来の膨張の仕方は違います。加速膨張だと「終わり」が来るのは早いかも知れません。でもそんなに近い話ではないので、ご心配には及びませんが。

膨張がどれだけ加速されるかはおいといて、膨張し続けると宇宙はどんな姿を見せるのでしょうか?

太陽のように核融合してエネルギーを放出している星は、その燃料を使い果たしてしまい、爆発したり光らない星を残します。星の規模によってその運命は決まっています。太陽よりずっと大きく重い星は「超新星」という爆発を起こします。空に突然明るい星が現れるので、「超新星」という名前が付いていますが、正体は重い星の爆発現象です。宇宙空間に水素ガスの濃い部分があれば重力によって集まって星を作ります。太陽系には鉄などの重い元素がありますので、一度爆発してその燃えかすが集まってできたと考えられています。

このように宇宙空間にある水素やヘリウムは星での核融合の燃料となり、重い元素が作られます。そして星が終わりを迎えると、後にはそれ以上燃えない(=核融合しない)燃えかすが残るわけです。遠い未来には、核融合の燃料となる軽い元素がすべて消費されて光る星は全く無くなるでしょう。それまで何十億、何百億年あるのか分かりませんが、心配するほど近い話ではありません。その前に、太陽が燃え尽きて地球も存在していないでしょう。

燃えかす(重い元素)を集めてリサイクルできないか?と考える人がいるかもしれません。確かに、元素合成期のようなエネルギー密度が実現できれば、元素は陽子と中性子にまで分解されて、再び元素合成の歴史をたどって、水素やヘリウムといった軽い元素が出来て、星が再生されるでしょう。しかし、元素合成の時期は、物質のエネルギー密度よりも放射(光子)のエネルギー密度が多い時期です。これだけのエネルギーを、生物もいないときに、重力だけで集めることができるかと考えると不可能だと思います。

人類が存在していない未来のことを心配しても仕方ないかも知れませんが、このように考えると、どんな宇宙になっているか想像できるでしょう。
暗黒な空間に燃えかすだけが取り残され、その空間はただただ膨張を続けるという静かで暗い宇宙です。またそれを感じるものもいない。