宇宙の物質の起源

 

 

 

宇宙の年表

宇宙の膨張則、つまり大きさのスケールと時刻との関係はフリードマンが見つけたことは前に述べました。

膨張の仕方は宇宙のエネルギーが、現在のように質量を持った物質で占められる場合と、放射(電磁波)が占める場合で少し違います。

時間が4倍たつと
時間が8倍たつと

物質優勢
空間の大きさは2.5倍
空間の大きさは4倍
(時間)2/3 に比例
放射優勢
空間の大きさは2倍
空間の大きさは2.8倍
(時間)1/2 に比例

空間の大きさと宇宙のエネルギー密度は関係していますので、これから時刻と温度の関係が分かります。「今から何年前は宇宙の大きさは今の何分の一」というのが分かればそのときの温度が分かるからです。
そして各温度で物質がどうなっているかという知識とあわせると、次のような宇宙の年表が出来上がります。(温度の単位は絶対温度です。)


この年表には未だ説明していない言葉や粒子の名前が出てきますが、後の章で説明いたします。
約1000兆度までは現在の高エネルギー実験で確認されてきた物理学の知識をもとにしています
それより高温の時代や宇宙の開闢(かいびゃく)に関しては、幾つかの説が提案されていますが、まだ確定したわけではありません。

この年表から分かることは、

1.

現在の宇宙を構成しているものは初めの1万年で出来上がった

1万年というのは宇宙の歴史のほんの100万分の1程度です。

2.

歴史の区切りは物質の階層性と関係している。

ということです。ここでいう「物質の階層性」とは

様々な物質を作っているいろいろな原子(水素、酸素、窒素、鉄、金、ウランなど)
それぞれの原子に対する原子核と電子
原子核を作っている陽子・中性子、それと電子
陽子・中性子を作っている素粒子(クォーク)、電子とその仲間(レプトン)

というように物質を作っているものには段階的により小さな構成要素がある、ということです。

この年表のように宇宙は昔は熱く、それが冷えるに従って現在の宇宙の姿になったという考え方を

ビッグバン宇宙論

といいます。ビッグバン宇宙論は現在の宇宙の観測と、ミクロな世界の物理との共同作業で出来上がった理論と言えるでしょう。詳しく言えば他の物理学(統計力学など)も重要な役割を果たしています。

次の章でミクロな世界の物理、素粒子のことを紹介した後にこの年表がどのようにして作られたかを説明します。