宇宙の物質の起源

 

 

 

ミクロな世界の物理

宇宙の膨張する速さはエネルギー密度が分かればアインシュタインの理論から知ることが出来ます。
単純に考えれば時間をさかのぼると宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度が大きくなり、温度も高くなっていくでしょう。そのうち私たちが日常では実現できないほどの高温・高密度の状態になっていくでしょう。
非常に高温・高密度な状態は、核融合反応が起こっている太陽で実現されていたり、加速器実験によって粒子の衝突実験を行うときに実現されることがあります。

このような状態では物質はどうなっているのでしょうか?

日常の状態

物質は分子、イオン、金属など。またそれらは様々な原子で出来ています。
1つの原子は原子核とその周りを回る電子から出来ています。

例えば水素原子は水素原子核(陽子)の周りに電子が回っています。

勿論、他にも酸素、窒素や色々な金属などの原子があります。それぞれ決まった個数の陽子と中性子から出来た原子核とその周りを回る電子とから出来ています。

数千度(太陽の表面)

高温のために電子は原子核から剥がされてバラバラに運動しています。

例えば水素原子では電気的にプラスの原子核にマイナスの電子が引力で引きつけられています。電子をはぎ取ろうとすると、エネルギーが必要なのですが、温度が十分高ければ周りに元気な粒子(や光子)がいてそれらが電子と衝突して電子を自由にします。

太陽の表面では水素原子核、重水素原子核(陽子1個と中性子1個)、ヘリウム原子核(陽子2個と中性子2個)と電子がバラバラになっています。

100億度から1万度

さらに高温になると、原子核の周りの元気な粒子により陽子と中性子の結合でさえ壊されてしまいます。
陽子と中性子は質量はほとんど同じで、中性子が少しだけ重い分、陽子の方が多い状態になっています。

陽子、中性子、電子がバラバラの状態です。但し中性子の方が陽子より少ないのです。そして全体の密度も大きくなります。

この表にあるように温度が高くなると物質を作っているものがどんどんバラバラにされていきます。
どの温度でどうなるかは、粒子の結合エネルギーとその周りの温度とで決まっています
原子から電子が剥がされる温度は、電子と原子核との結合エネルギーで決まっていますし、原子核の中の陽子と中性子がバラバラになる温度はそれらの結合エネルギーで決まっています。
温度が高くなって周りにその結合エネルギーと同程度以上のエネルギーを持って運動する粒子が増えると、結合が壊されてしまうのです。

これは放射線が人体に悪いのは、放射線(高エネルギーの光子)が人体を作っている物質(タンパク質など)の中の原子同士の結合の一部を壊してしまうからというのと同じです。

宇宙という壮大な対象を考えているうちに、いつの間にか原子や原子核、陽子、中性子といったミクロな世界の話になってしまいました。

宇宙の過去を語るにはこのようなミクロな世界の物理が必要なのです!

さらに高温ではどうなっているのでしょうか?
それを知るにはさらにミクロな世界の知識が必要です。陽子や中性子は壊れることがあるのでしょうか?
もし壊れることがあればその構成要素の間の結合エネルギー(相互作用)はどうなっているのでしょうか?

これらの問いに対する答えと解説は次の章に譲って、ここではその答えを先取りして、現在まで分かっている宇宙の歴史を簡単に紹介します。