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宇宙の膨張の仕方と宇宙のエネルギー密度に関係があると言いました。アインシュタインが示したように質量もエネルギーの一形態です。有名なE=mc2という式をご覧になったことがあるかも知れません。これは質量m(kg)の物質はそれに光速c=30万km/secの自乗を掛けただけのエネルギーを持つ、という意味です。cが大きいのでかなり大きな数字になります。実際原子力エネルギーは原子核(ウランやプルトニウム)の分裂反応で余った質量をエネルギーとして取り出しています。
例えば1グラムの質量(1ccの水)をすべてエネルギーに変えることが出来るとすると、20万トンの0度の水を沸騰させることが出来ます。
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ではいろいろな密度を見てみましょう。
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密度は一辺の長さが1cmのサイコロの体積の質量(グラム)で測ります。
水(液体)
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1 g/cm3
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地球の平均密度
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5.5 g/cm3
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太陽の平均密度
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1.4 g/cm3
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銀河の平均密度
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10-25 g/cm3
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宇宙の平均密度
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10-30 g/cm3
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ここで10-25とは小数点の後に0が24個あって25個目に1があるような非常に小さな小数です。10-8が1億分の1ですから、「1億分の1の、そのまた1億分の1のそのまた1億分の1のさらに10分の1」です。
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陽子(水素原子核)の質量は1.7x10-24
gなので(6.0x1023というアボガドロ数だけ集めると1gになります)、宇宙全体を平均すると、1立方メートルに陽子1個程度の密度でほとんど真空なのです。私たちがたまたま物質の濃い所にいるのです。
またこれらの質量を構成しているものの中身を見てみると、質量比でおよそ下の表の通りです。
陽子(水素原子核)
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ヘリウム4原子核
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重水素原子核
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リチウム7原子核
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75 %
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25 %
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0.01 %
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10-8 %
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この表にない酸素や窒素、鉄、金などの元素はずっと少ないのです。
このことは奇妙に感じるかも知れませんが、宇宙全体で見ると星が燃える(核融合反応)燃料となる水素などの軽い元素が圧倒的に多いのです。重い元素は星が燃えるときの反応で作られています。現在の太陽でも水素やヘリウムから窒素や酸素が作られています。地球などの惑星にある重い元素は太陽の祖先の星の中で作られた元素が集まった燃えかすで出来ているのです。
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宇宙にあるエネルギーの内、古くから知られている天体などの直接観測できるエネルギーは大部分はこのような物質の質量の形をしていますが、それ以外のエネルギーが存在することが見つかりました。
1965年にレーダーの研究をしていたペンジアスとウィルソンが、波長が7cmから21cmの電波が宇宙のあらゆる方向からやってくることを発見しました。
どの方向から来る電波にも、その波長と強度の間に一定の関係があることも分かりました。
この関係は宇宙からやってくる電波が絶対温度で2.7度を持つことを意味しています。
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ではここで絶対温度について簡単にお話ししましょう。
物質(気体・液体・固体)は分子・原子から出来ています。これらの分子は運動したり、振動しています。そして、
絶対温度は運動・振動の平均エネルギーに比例します。
私たちが日常使う温度(摂氏)は1気圧での水の融点を0度、沸点を100度としています。
摂氏0度 =
絶対273度
摂氏100度 = 絶対373度
です。
絶対0度というのは粒子が何も運動していない死の世界です。
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温度が高ければ高いほど元気な粒子の割合が多くなります。その粒子が従う物理法則が分かれば、ある温度に対して、1つのエネルギーを持つ粒子の割合を知ることが出来ます。(統計力学という物理学の一分野です。)
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光(電磁波)のエネルギーは波長が短いほど大きいので、温度が高いほど波長の短い光の割合が大きくなります。
右の図は絶対100、200、300、400度での各波長の光の分布を表しています。(これはプランクによって示された分布なのでプランク分布と言われています。)
上の図は横軸が波長の逆数(振動数に比例)になっているのでやまの位置が左寄りでなくて右寄りになっています。
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ペンジアスとウィルソンが観測した電磁波はこの波長と強度の関係が丁度絶対2.7度のものでした。
この電磁波は季節によらずにあらゆる方向からやってくるので宇宙がこの電磁波で満たされていると考えられます。この電磁波のことを
といいます。
現在では様々な方向から来る宇宙背景放射を精密に観測して、それらが互いに良く一致することが確かめられていて、それが宇宙が一様・等方であることの証拠にもなっています。この宇宙背景放射を宇宙空間でよりクリアに観測することを目的としてCOBE(Cosmic
Background Explorer)という衛星がNASAによって打ち上げられました。
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この絶対2.7度の電磁波のエネルギー密度は質量による宇宙の平均密度の約1万分の1なので、現在の宇宙の膨張は物質の質量エネルギーによって決まっています。
ではなぜここで宇宙背景放射の話をしたかというと、時間をさかのぼると電磁波のエネルギーが宇宙を支配している時代があったからです!これについては次の章でお話しします。
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ここで紹介したエネルギー密度の担い手はすべて観測で確認されているものです。
非常に暗い星、全く光っていない星(中性子星)やガス、ブラックホールは考慮されていません。
またニュートリノやその他の未発見の非常に弱い相互作用しかしない素粒子が存在して、宇宙のエネルギー密度の評価を変更する可能性はあります。
この問題については最後の章で触れたいと思います。
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