LaTeXを利用したプレゼンテーション



ここでは、LaTeXを用いて作ったプレゼンテーション用の原稿からpdfファイルにする手順を紹介します。目的は、

ということを満たすファイルを作ることです。カラーとグラフィック(eps, jpg, pdfファイル)を扱うために、colorgraphicxという、LaTeX2eに標準で添付されるパッケージを利用します。また、デフォルトのフォントを見易くするために、foiltexというパッケージも利用します。これらのパッケージまたはマクロ以外にも、自分が使いたいものが通常のLaTeXと同様に使えます。

XeLaTeXを利用したプレゼンテーションについてはこちらをご覧下さい。

MacOS限定ですが、KeyNoteやPowerPointにTeXで作った式を貼付けるツールLaTeXiTのtipsをこちらに集めました。
式の中で色を変えたり、XeLaTeXを使えば式中に日本語を使うことができます。


必要なソフトウェアは

です。私の作業環境は、Macintosh OS XまたはVine Linuxですが、その他のUNIX系のOSは勿論のこと、Microsoft Windowsでも上記のソフトウェアが用意されています。残念ながら今のところ、MacのClassic OSで使えるdvipdfmxは無いようです。Classic用のpTeXを用いてdviまたはpsファイルを作ることはできます。これをAdobe Acrobat(商品)に付属するAcrobat Distillerを使えばpdfファイルを作ることができます。以下に、これらのソフトウェアを入手する、あるいはその使い方を知るのに便利なサイトを挙げておきます。

Mac OSX
MacTeX (TUG) MacTeX: pTeX、XeTeXなどを含むTeXLiveとGhostscript、及び、TeXShopなどのアプリケーションを含むパッケージ
JIS X0212 for pTeX OS X用pTeX, gs関連
pTeX package for Mac OSX バイナリ・パッケージの他に、便利な情報が得られる掲示板やリンク
MacpTeXとその周辺 OSX用のpTeX, gs, dvipdfm等のmakeの方法、OSX用xdviであるMxdvi、Classic OS用pTeX関連ソフト
Windows
W32TeX 最新のpTeX、jTeX、dvipdfmxなど
その他
The publishing TeX pTeXのおおもと(ASCII)
dvipdfmx dvipdfmxプロジェクト
Adobe Reader Adobe社のReaderダウンロード(フリー)


EPS fileの図を含むファイルをdvipdfmxで処理する際に、gs(Ghostscript)を必要とします。また、gsはjpeg、png、glibのライブラリを必要とする場合があります。それぞれのOSに適当なライブラリをインストールして下さい。


上記のソフトウェアをインストールすれば直ちにプレゼン用のpdfファイルを作製することができます。
日本語を使ったpdfファイルを作る場合は、フォントを埋め込むことをお薦め致します。

pdfファイルにフォントを埋め込む必要性について
プレゼンテーションをするのに、自分がpdfを作成したパソコンを使える場合はフォントを埋め込まなくても期待した通りの出力になります。しかし、ファイルだけをCD-Rなどで持ち運び、会場にあるパソコンを使う場合は、pdfファイルにフォントが埋め込まれていないと、Acrobat Readerがそのパソコンにインストールされているフォントで代用します。(この状況は、上記の「文書のプロパティ」から知ることができます。)pdfファイルを作ったときのフォントと、実際に表示に使われるフォントが異なるときには、「文字化け」を起こして期待通りの出力にならないことがあります。このようなことを避けるために、日本語フォントもpdfファイルに埋め込んでおくわけです。


MacOS Xを例にとって日本語フォントを埋め込む方法についてはこちらをご覧下さい。Postscriptフォントがあれば、LinuxやWindowsについても同様の設定ができると思います。

MacTeX (2011以降)はpTeX/pLaTeXや上記のXeTeX/XeLaTeX、その他必要なパッケージとTeXShopやLaTeXiTというここで紹介しているアプリケーションを含みます。
Mac OS Xで日本語を処理できるTeX/LaTeXを初めて使う人でドライブ容量に余裕のある人はこれをインストールするとよいでしょう。MacTeXを使うときの設定をこちらにまとめておきます。

さて、以下にプレゼン用のLaTeXファイルとpdfファイルの作り方を述べます。

以下の説明で用いるパッケージ、マクロ、サンプルをまとめて圧縮したものを

sample.tgz sample.tex + foils packageのファイルをtar+gzipで圧縮したもの

sample.uu

sample.tgzをuuencodeしたものをshell scriptで展開できるようにしたもの

sample.sit

MacintoshのStuffIt archiveでStuffIt Expanderで展開できます

としていますのでご利用下さい。 出来上がりをpdfファイルにしたものはここでご覧になれます。

 

用意するもの

1. LaTeX 2e

この中に標準で含まれているcolorというpackageを使います。
eps fileを張り込むならgraphicxというpackageも使います。
これらの使い方については、お使いのLaTeX 2eのディレクトリにある

 {TeX directory}/texmf/tex/latex/graphics/grfguide.tex

を参照して下さい。(知らなくても以下のサンプルを参考にすればLaTeXファイルを作れます。)

2. foiltex package

これはtransparencyを作成するために作られたLaTeX packageです。
下に紹介しているCTANなどのサイトから、オリジナル(foiltex.ins)を持ってきて展開します。この中で必要なファイルは

foils.cls
foils.sty
fltfonts.def

の3つのファイルと、使うフォントの大きさに応じて

foil17.clofoil20.clofoil25.clofoil30.clo

のどれか。(私はfoil20.cloを常用しています。)
これらをTEXINPUTで指定されているディレクトリ(通常、/usr/local/share/texmf/tex/)か、今タイプセットしようとしているファイル(sample.tex)と同じディレクトリに置いておきます。

3. その他自分が使いたいpackage or sytle file

添付のsample.texでは影付きや角の丸いboxを使っているので、fancybox.styを読み込むようにしています。
その他bold faceのmath font(ギリシャ文字や数式中の斜体文字)を使いたいときは「tools」というpackageがあると便利です。今はLaTeX 2eに標準で入っていると思います。\usepackage{bm}とします。
これらのpackageやその他のTeX関係のファイルはCTAN(the Comprehensive TeX Archive Network)から得ることができます。
日本のmirrorは

https://www.t.ring.gr.jp/archives/text/CTAN/

にあります。fancybox.styのドキュメントもここにあります。


使い方

1. ソースファイルの作成

上記の環境とファイルを用意したら、添付のsample.texを見て下さい。
それを参考にsource fileを作って下さい。

日本語コードの問題がありますので、かつて私が使った英語のトラペンの一部を使っていますが、日本語が処理できるLaTeX 2e (ASCIIのpTeX 2.*.*など)があれば日本語が入った文章も作ることが出来ます。

プロジェクタやスクリーンによっては、横長の原稿の方が適している場合があります。そのときは、

\documentclass[20pt,landscape]{foils}

とします。landscapeはLaTeXのdocumentclassの標準的なオプションで、用紙の縦と横の長さを入れ替えます。
\specialコマンドを使って、dvipsなどに用紙の情報を送る必要があります。サンプルのtexファイルを用意しましたので、それを参考にしてください。(landscapeのサンプルは次の項にあるcolordef.texを使います。またそれはShift-JISの日本語コードを使っています。pLaTeXがShift-JIS用にmakeされていない場合は、文字化けする可能性があります。)
このlandscapeのサンプルの出来上がりはこちらで見ることが出来ます

landscape(横置き)のtexファイルから、横置きのpdfファイルを生成するには注意が必要です。
まず、dvipdfmxを用いてdvi->pdfと生成する場合には、texファイルに上記のように\specialコマンドを用いるだけで、横置きのpdfファイルが生成されます。
dvips(k)を用いてdvi->psを作り、Adobe Acrobat Distillerでpsをpdfに変換する際には次のようにします。

1. texファイルでは\specialコマンドを使わない
2. dvipskのオプションでlandscapeを指定する。
例えば、> dvips -Pps -t a4 -t landscape -D 600 hoge.dvi
3. Distillerの設定で、「デフォルトページサイズ」の項目で、例えばA4だと、幅:27.94cm、高さ:21.59cmとする。


2. カラーの使い方

colorを定義するスキームは上記のgraphicxというパッケージにあるのですが、ここではそのスキームに乗っ取って幾つかよく使う色を私が定義して、revmacro.texというmacro fileに記述してあります。このファイルからcolor の定義の箇所だけを切り取ったcolordef.texを自由に使って下さって結構です。このmacroを編集中のtexファイルのあるディレクトリに置いておくか上述のTEXINPUTのディレクトリに置きます。

例えば

{\blue{\magenta B}aryon {\magenta A}symmetry of the {\magenta U}niverse}


とすると、「Baryon Asymmetry of the Universe」全体をblueにしておいて「B」「A」「U」だけをmagentaにすることになります。つまり

Baryon Asymmetry of the Universe

のようになります。

要するに色を変更したい箇所を{\color ...}で囲めばよいのです。
lineやboxの色も同様にして色を変えることができます。

3. ファイルの処理
MacintoshやWindowsには、エディタからタイプセットなどができる場合がありますが、基本的にすることは、terminalで

>platex sample.tex
>dvipdfmx sample

として、sample.pdfができあがります。

4. プレゼンテーション
pdfファイルができたら、それをAdobe Readerで開きます。
サムネールを使えば、任意のページにジャンプできます。ページ数が多いときは「小さいサムネール」を選んでおくと、より多くのページがサムネールのコラムに表示できます。
実際のプレゼンでは、「表示」メニューから「全画面表示」(Macのshortcutはcommand+L、Windowsではctrl+L)で背景を黒(デフォルト)に変更して、カーソルキーでページ間を移動します。
ページを移動するときの効果や、背景の色は「環境設定」の「全画面表示」の項目で設定できます。

Tips  これまでの経験で気が付いたことをランダムにメモしておきます。

1. fcolorbox
boxの中を塗りつぶしたいときはこれを使います。color packageに入っています。
例えば

\fcolorbox{red}{yellow}{%
$\displaystyle{\blue{
{{n_B}\over s} = {{n_b-n_{\bar b}}\over s} =
(0.2\; -\; 0.9)\times 10^{-10}}}$}

とすると赤く縁取られた黄色のboxの中にdisplaystyleの式を書きます。
\colorboxを使うと縁なしの色付きboxを書くことができます。

2. boxの中の箇条書きや長い式、センタリング
fancybox.styにあるマクロを使っても出来ますが、minipage環境を使うと簡単に出来ます。minipage環境をそっくりboxで囲みます。センタリングはboxをセンタリングします。

boxを使った様々な例をここに集めました。

原稿を作っているディスプレイではboxの線が見えているのに、プレゼンするときに線が切れることがあります。これはディスプレイとプロジェクタの解像度(pixel数)が異なるために起こる現象です。それを避けるにはboxに使われる線を少し太めに設定しておきます。例えば

\setlength{\fboxrule}{1.5pt}

という宣言をプリアンンブル(\begin{document}の前)でしておきます。

3. ページ全体の色を変える
トラペンを使う場合には、全体を塗ることなど考えもしなかったのですが(印刷コストのため?)、pdfを使う場合はページ全体の色を変えることで見易くすることも簡単に出来ます。
\pagecolor{navyblue}
\yellow

とすると、ページ全体がnavyblue (colordef.texで定義)になり、文字がyellow(=\color{yellow})になります。\pagecolor\colorbox\fcolorboxと同様、color packageに入っています。


\pagecolor\colorというコマンドは、グローバルに有効です。つまり、次のコマンドが来るまで有効です。
\pagecolor{white}とすれば、元の色に戻ります。


4. ヘッダ・フッタ

fancyhdr.styを使うと、ヘッダやフッタに好みの設定が出来ます。
例えば、フッタにページ数だけでなく、[現在のページ]/[総ページ数]と表示させることも出来ます。
具体的な例を、landscapeの原稿のサンプルに示しましたので参考にして下さい。

5. 図やグラフの取り込み

eps形式のファイルにして、texファイルがあるディレクトリに置きます。そのファイル名をfoo.epsとすると、

\usepackage{epsfig}

と宣言しておいて、図を置きたい場所で、

\centerline{\epsfig{file=foo.eps, height=50mm}}

とすれば、高さを50mmに(縦横比を固定したまま)貼り付けることができます。幅を指定したいときはheightの代わりに、width=50mmなどとします。論文などでは、figure環境の中にこのようなコマンドを入れて、番号やキャプションを着けます。

epsファイルをtexファイルに含むマクロはepsfig以外にもあります。\includegraphics\psfigなどもあります。古くは\epsfboxなどもありました。\epsfig\includegraphicsはgraphicxパッケージに含まれていて、これからもLaTeX2e以降に添付されると思われますので、こちらを利用した方が良いでしょう。


includegraphicsの利用法は

\usepackage{graphicx}

と宣言しておいて、

\centerline{\includegraphics[height=50mm]{foo.eps}}

とする。[]で囲まれたオプションでは、height, widthの他、scale=0.5も使えます。
また、jpegファイルなども取り込めます。但し、epsファイルでない場合は、TeXでタイプセットした際に図の大きさの情報(BoundingBox)がファイルに書き込まれていないので、ebbコマンドを実行し、BoundingBoxの情報を持つ.bbファイルを生成して、図のファイルと同じ場所に置いておきます。つまり、ターミナルで

> ebb foo.jpg

を実行した結果、foo.bbというファイルができますので、それをfoo.jpgと同じディレクトリに置いておきます。

私はDeltaGraph Proというソフトを使ってグラフを作り、eps形式で保存します。論文にはモノクロのものを使いますが、プレゼン用にはカラーにしたものを使います。
色の修正はDeltaGraphでも出来ますが、Adobe Illustratorを使っても出来ますし、Illustratorを使えば、Type1のComputer Modern系のフォントがインストールされていればそれを使ってラベルなどを書けます。論文ではその方が統一感があります。

6. print
カラーのpsプリンタがあればdviファイルをdvipsでpsファイルにしたものをそのままプリンタに送ればよいのですが、カラーのpsプリンタが利用できない場合は、psファイルをpdfに変換してからお手頃なプリンタに出力しています。
このときプリンタによって印字領域が異なりますので、右端や上下が切れたり余白が出来たりします。私はA4を想定してLaTeXファイルを作り、pdfを出力するときにAdobe Readerの印刷のオプションにある「用紙サイズに合わせる」を選んで印刷するようにしています。

7. dvipsの利用
取り込むepsファイルによってはgs(またはjpeg, pngのライブラリ)がうまく機能せずにpdfに画像が入らない場合があります。
そのような場合、dvipsを用いて、いったんpsファイルにしておいて、Acrobat Distillerでpdfに変換すればうまくいきます。(さすが純正!)
ヒラギノ・フォントを埋め込む場合は、dvipsの設定(font map)を修正する必要があります。その方法はこちらを参照してください
。後はDistillerの設定で、フォントを探す場所としてヒラギノ・フォントがある場所さえ指定されていればそれを埋め込んだpdfファイルが作られます。


Linux + pLaTeX + dvipdfm + (gnuplot, tgif) + Adobe Reader のセットは完全に無料で、プレゼンテーションに使えるpdfファイルを生成し、実際にプレゼンができるわけです。
また、pdfファイルのメリットは、そのファイルを誰でも同じように見ることができることです。


その他、TeX, LaTeXに関する情報へのポインタを私的なリンク集にまとめてあります。

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