力学D
種別 専門必修科目、2単位
教育目標 物理学は多様な自然現象の中から普遍的な法則を導き出すことを目的としている。解析力学は法則を定式化する際に、対象となる力学変数(質点の位置座標、剛体の回転角など)の選び方に依存しない形で法則(=運動方程式)を導出する。ハミルトン形式は任意の力学系の時間発展を位相空間内の点の運動として捉える。この見方は、座標だけを用いる従来の形式より広い視点を与え、正準変換という新しい変数変換を利用することで保存量を導出できる。目標は
  • ラグランジュ函数からハミルトン函数を導出する
  • ハミルトンの運動方程式を導出し、その意味を理解する
  • 正準変換とその応用としてのHamilton-Jacobiの理論を理解する
自然界では力学的に安定な状態が最も実現されやすい。外力や熱的揺らぎなどにより、その周りの微小振動も自然界によく現れる。特に原子・分子、固体中のイオンの振動や電磁波などもこのような現象である。多自由度の力学系において安定点の周りの微小振動を取り扱う一般的方法を習得する。具体的な目標は
  • 多自由度系の運動方程式の線形化
  • 基準モードの振動数と振幅を導出する
履修上の注意 各自講義ノートをダウンロードして用意すること。入手方法は第1回の講義の時間に説明する。
講義ノートに掲載している演習問題を解くこと。
授業概要 ハミルトン形式は統計力学や量子力学の基礎となる力学の定式化である。
ラグランジュ形式で導入された一般化座標とその時間微分を正準変数で書き換え、対象となる系の運動を正準変数の成す空間(位相空間)の中の点の運動として捉える。どのような力学系でもこの運動はある一般的な法則に従っている。この位相空間の運動を別の正準変数で書き換えると簡単に運動方程式が解けることがある。この正準変換とはどのようなものか、またハミルトニアンの不変性と正準変換の母函数の保存が対応していることをみる。
多自由度系は厳密に解くことは一般には出来ないが、ある安定点の回りの微小振動は解くことが出来る。運動方程式の解は幾つかの基準振動の重ね合わせとして表される。これは固体の振動や、分子の振動などの現象の基礎となっている。講義では微小振動の一般論を展開し、基準振動の求め方を解説する。
授業予定 第2章 Hamilton形式
2.1 配位空間と位相空間
 一般化座標と正準変数
 配位空間の軌道と位相空間の軌道

2.2 Hamiltonian
 Legendre変換とHamiltonianの定義
 Hamiltonianの物理的意味

2.3 Hamiltonの運動方程式
 Hamiltonの運動方程式の導出
 変分法による導出
 Liouvilleの定理

2.4 Poisson括弧
 Poisson括弧の定義と代数的性質

2.5 正準変換
 正準変換と母函数
 正準変換の例
 無限小正準変換とPoisson括弧

2.6 Hamilton-Jacobiの理論

第3章 微小振動
3.1 多自由度系の微小振動
 平衡点と運動方程式の線形化
 基準モードの振動数と振幅
 応用例
成績評価基準 中間試験(30%)と期末試験(70%)を総合して判定する。
単位取得状況 登録者数:63 合格者数:33 不合格者数:20 単位取得率:0.524 (2004)
登録者数:71 合格者数:42 不合格者数:18 単位取得率:0.592 (2005)
登録者数:77 合格者数:49 不合格者数:14 放棄者数:14 単位取得率:0.636 (2006)
登録者数:68 合格者数:48 不合格者数:11 放棄者数:9 単位取得率:0.706 (2007)
登録者数:66 合格者数:38 不合格者数:15 放棄者数:13 単位取得率:0.576 (2008)
関連リンク 講義ノートのダウンロード
授業評価
改善計画
2005, 2006

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